
清掃のKY活動記録テンプレート|ヒヤリハット報告書の記入例と危険予知【2026年版】
清掃のKY(危険予知)活動記録は、作業前に「どこにどんな危険があるか→対策」をチームで出し合って1枚に残す安全書式です。床の転倒・高所転落・薬剤の3場面を軸に、危険ポイントと対策・実施者を記録します。
清掃現場では毎日のように「濡れた床で滑りかけた」「脚立から踏み外しそうになった」といった小さな危険が起きています。ところが様式が手元になく、口頭注意だけで済ませてしまう小規模清掃会社は少なくありません。
本記事では、KY活動記録表とヒヤリハット報告書の項目・記入例を3場面で示し、両者の違い、分類早見表、官公庁入札での活かし方、デジタルでの一元管理までを受注側の清掃会社視点で整理します。

清掃のKY活動記録とは?ヒヤリハット報告書との違い
KY活動記録の定義と目的
KY活動記録とは、作業を始める前にチームで「この現場・この作業にどんな危険が潜んでいるか」を洗い出し、危険ポイントと対策・実施者を1枚に残す安全書式です。結論から言えば、目的は事故が起きてから対処することではなく、行動する前に危険を予知して潰すことにあります。
その土台が、中央労働災害防止協会が普及させた危険予知訓練(KYT)です。事業者には雇入れ時や作業内容変更時に安全衛生教育を行う義務があり(労働安全衛生法第59条)、日々のKY活動はこの安全教育を現場で実践する仕組みといえます。
KY活動記録とヒヤリハット報告書の違い早見表
混同されがちですが、2つの書式は「いつ」「何のために」書くかが異なります。
| 項目 | KY活動記録 | ヒヤリハット報告書 |
|---|---|---|
| タイミング | 作業の「前」 | 危険を感じた「後」 |
| 目的 | 危険を予知して対策を決める(予防) | 事故に至らなかった気づきの共有(再発防止) |
| 主な様式欄 | 作業内容/危険ポイント/対策/実施者 | 発生状況/要因/対策/水平展開 |
| 使う場面 | 朝礼・作業開始前ミーティング | 冷やっとした都度・その日のうち |
KY活動が「これから起きるかもしれない危険」を扱うのに対し、ヒヤリハット報告書は「実際に起きかけた事実」を扱います。両輪で回すことで予防と再発防止がつながります。
なぜ小規模清掃会社にKY記録が必要か
厚生労働省「令和6年の労働災害発生状況」によると、休業4日以上の死傷者数は135,718人で、うち清掃業が属する第三次産業が約52%を占めました。さらに転倒・墜落転落など労働者の行動に起因する災害が全体の約58%に達し、転倒災害は第三次産業で最も多い型です(出所=厚生労働省 令和6年労働災害発生状況)。
清掃の主要リスクである転倒・転落を減らすには、現場ごとの危険を作業前に言語化するKY活動が有効です。加えて、官公庁入札では安全衛生管理体制の整備が問われることがあり、記録の有無が実務上の裏づけになります。
清掃現場のKY活動記録テンプレート(項目と記入例)

記録表の必須項目
KY活動記録表に決まった法定様式はありませんが、実務では次の欄をそろえると過不足がありません。
- 実施日・現場名・作業内容
- 危険ポイント(どこで・何が・どうなる)
- 対策(具体的な行動)
- 実施者・確認者(署名欄)
ポイントは、危険を「濡れた床で滑る」のように現象まで具体化し、対策を「モップ後にコーン設置、動線を迂回」のように行動レベルで書くことです。抽象的な「注意する」では現場で機能しません。
記入例:床の転倒・高所転落・薬剤取扱いの3場面
清掃現場で頻度の高い3場面を、危険ポイント→対策→実施者の実記入文で示します。
| 作業場面 | 危険ポイント(記入例) | 対策(記入例) | 実施者 |
|---|---|---|---|
| 床の水拭き・洗浄 | 濡れた床で来訪者や作業者が滑って転倒する | 作業区画にコーン・「足元注意」表示を設置し、片側ずつ施工して乾いた動線を確保 | 田中 |
| 高所ガラス・照明清掃 | 脚立から踏み外して転落する | 脚と水平面の角度を75度以下にし開き止め金具を確実にかける/天板に乗らない/2人1組で支持(労働安全衛生規則第528条) | 佐藤 |
| 洗剤・薬剤の取扱い | 塩素系と酸性洗剤の混合で有毒ガスが発生する | 「混ぜるな危険」表示を確認し塩素系と酸性を同時使用しない/換気を確保し保護手袋・保護メガネ着用 | 鈴木 |
塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)と酸性洗剤が混ざると有毒な塩素ガスが発生します(混合の危険性の注意喚起=厚生労働省・国民生活センター)。住宅用・台所用等の家庭用漂白剤には、家庭用品品質表示法(雑貨工業品品質表示規程)に基づき「まぜるな危険」の表示が義務づけられています(出所=消費者庁 家庭用品品質表示法)。同表示義務の対象は消費者向け家庭用品ですが、業務用洗剤にも同様の表示が広く用いられています。清掃現場では容器の取り違えが起きやすいため、KY記録で毎回確認するのが有効です。
KYT4ラウンド法で危険予知を1枚に落とす手順
中央労働災害防止協会のKYT4ラウンド法は、イラストや現場を見ながら小集団で話し合う4段階の進め方です(出所=中央労働災害防止協会)。
- 第1ラウンド 現状把握:どんな危険が潜んでいるか事実を出し合う
- 第2ラウンド 本質追究:これが危険のポイントだと絞り込む
- 第3ラウンド 対策樹立:あなたならどうするか対策を出す
- 第4ラウンド 目標設定:今日の重点実施項目を決め指差し呼称で確認する
この流れをそのまま記録表の欄(危険ポイント→対策→実施者)に落とし込めば、朝礼の5分でKY活動記録が1枚完成します。
ヒヤリハット報告書の書き方と記入例
ヒヤリハット報告書の必須項目
ヒヤリハット報告書は、事故に至らなかった「冷やっとした・はっとした」気づきを残す書式です。最低限そろえたいのは次の6項目です。
- 発生日時・場所
- 作業内容
- 発生状況(どんな状況で何が起きそうになったか)
- 要因(なぜ起きかけたか)
- 対策(実施した/すべきこと)
- 水平展開(他現場・他メンバーへの共有)
書きやすさが継続のカギです。責任追及の書式にすると報告が上がらなくなるため、「気づいた人を評価する」運用にそろえます。
記入例:清掃現場の典型3ケース
| ケース | 発生状況(記入例) | 要因 | 対策・水平展開 |
|---|---|---|---|
| 濡れ床 | 洗浄直後の廊下で通行者が滑りかけた | 表示設置前に通行が始まった | 洗浄前に表示を先行設置。全現場の作業手順に反映 |
| 脚立 | 高所清掃中に脚立がぐらつき踏み外しかけた | 開き止め未確認・不整地に設置 | 設置面の水平確認を手順化。2人1組を徹底 |
| 洗剤混合 | 排水口清掃で酸性と塩素系を続けて使い刺激臭がした | 容器の取り違え・換気不足 | 保管棚を色分け。混合禁止の掲示と換気ルールを共有 |
いずれも「起きたこと」だけで終わらせず、水平展開まで書くことで組織の学びになります。
ヒヤリハット分類 早見表(人/設備/環境/薬剤の4類型)

集まったヒヤリハットは要因別に分類すると対策が立てやすくなります。清掃現場を4類型で整理すると次の通りです(出所=中央労働災害防止協会の危険予知手法および厚生労働省 労働災害統計をもとに清掃現場向けに再構成)。
| 類型 | 典型事例 | 一次対策 |
|---|---|---|
| 人的要因 | 手順の省略・確認不足・急ぎ作業 | 手順書とKY活動で確認を習慣化 |
| 設備・機械 | 脚立・清掃機械の不備、コード類の躓き | 使用前点検・整理整頓・配線処理 |
| 作業環境 | 濡れ床・段差・暗所・第三者の通行 | 表示設置・区画分け・照度確保 |
| 薬剤・化学物質 | 洗剤の混合・保護具未着用・換気不足 | 混合禁止・保護具・換気・保管の色分け |
転倒災害が多い清掃業では「作業環境」類型の対策が特に効きます。分類して件数を見える化すると、どこに手を打つべきかが判断できます。
KY記録・ヒヤリハットを入札・安全書類に活かす

官公庁の清掃入札で問われる安全衛生管理体制との接続
官公庁の清掃業務入札では、案件によって安全衛生管理体制や安全書類の整備状況が評価・確認されることがあります。KY活動記録・ヒヤリハット報告書は、その体制が形だけでなく日々運用されている裏づけになります。求められる書類は各発注機関の入札公告・仕様書に依存するため、必ず該当案件の公告を確認してください。
記録の保管ルールと毎日提出を仕組み化するコツ
KY活動記録やヒヤリハット報告書そのものに、様式名を指定した一律の法定保存義務は限定的です。一方で特別教育の記録は3年間の保存が義務づけられており(労働安全衛生規則第38条)、安全教育の記録は関係法令で一定期間の保存が求められる場合があります。入札・監査での提示に備え、KY記録も一定期間保管するのが実務上安全です。
毎日続けるコツは、書式を1枚に簡素化し、朝礼のルーティンに組み込むことです。関連する運用は清掃の労働安全衛生の基本もあわせて参照してください。
紙・Excel運用の限界とデジタルでの一元管理

紙・Excel運用でありがちな3つの問題
安全書式を紙やExcelで回すと、現場が増えるほど次の問題が出ます。
- 未提出:現場任せで提出が漏れ、書いたか確認できない
- 散逸:紙が現場や車内にたまり、必要なときに探せない
- 集計不能:ヒヤリハットの傾向を類型別に集計できず、対策が打てない
書くこと自体が目的化し、記録が改善につながらないのが最大の損失です。
写真付き作業報告と案件別一元管理で安全書式を回す
これらは、現場スマホから写真付きで報告し、案件(物件)ごとにデータを一元管理する仕組みで解消できます。KY記録・ヒヤリハットをその場で入力し類型別に自動集計できれば、未提出の可視化から傾向分析までが1つの流れになります。ビルメンHUBのような案件別一元管理なら、清掃の作業報告書アプリと同じ土台で安全書式も回せます。
よくある質問
清掃のKY活動記録は毎日書く必要がありますか?
KY活動は作業前に危険を予知して共有する活動のため、原則として作業日ごと・現場ごとに実施し記録します。事業者には雇入れ時・作業内容変更時の安全衛生教育義務があり(労働安全衛生法第59条)、安全配慮の観点から日次で残す運用が一般的です。
KY活動記録とヒヤリハット報告書は何が違いますか?
KY活動記録は作業「前」に危険を予知して対策を決める予防の書式、ヒヤリハット報告書は事故に至らなかった「後」の気づきを記録して再発防止に活かす書式です。本文の早見表でタイミング・目的・様式の違いを整理しています。
清掃現場のヒヤリハットにはどんな例がありますか?
濡れた床での転倒しかけ、脚立・高所作業での踏み外し、洗剤の混合による有毒ガス発生の危険などが代表例です。本記事ではこれらを人・設備・環境・薬剤の4類型に分類した早見表で整理しています(出所=中央労働災害防止協会の危険予知手法および厚生労働省 労働災害統計をもとに再構成)。
KY活動記録やヒヤリハット報告書に法的な保存義務はありますか?
様式名を指定した一律の保存義務は限定的です。ただし特別教育の記録は3年間の保存が義務づけられており(労働安全衛生規則第38条)、安全教育の記録は関係法令で一定期間の保存が求められる場合があります。入札・監査での提示に備え保管を推奨します。
官公庁の清掃入札でKY記録の提出は求められますか?
入札案件により、安全衛生管理体制や安全書類の整備状況を評価・確認するものがあります。KY活動記録・ヒヤリハット報告書は体制を裏づける実務資料になります。求められる書類は各発注機関の入札公告・仕様書に依存するため、必ず該当案件の公告を確認してください。
ヒヤリハット報告書の記入例で最低限必要な項目は?
発生日時・場所、作業内容、どんな状況で何が起きそうになったか(発生状況)、その要因、実施した/すべき対策、他現場への水平展開の6項目が基本です。本文に清掃現場の記入例文を場面別に掲載しています。
まとめ|安全書式は「書いて終わり」から「集計して改善」へ
清掃のKY活動記録は作業前の危険予知、ヒヤリハット報告書は事故に至らなかった気づきの記録で、両輪で回すことで予防と再発防止がつながります。記入は危険ポイント→対策→実施者を具体化するのがコツで、KYT4ラウンド法をそのまま欄に落とせば朝礼の数分で1枚完成します。転倒災害が多い清掃業では、集めた記録を4類型で集計し対策につなげることが重要です。運用の土台は清掃の労働安全衛生の基本、日々の記録の仕組み化は作業報告書アプリの活用もあわせてご覧ください。
安全書式を、まず1枚から。
清掃現場向けの「KY活動記録表+ヒヤリハット報告書」テンプレート(危険ポイント/対策/実施者欄つき・3場面の記入例入り)と、日次運用チェックリストを無料で配布しています。重い契約は不要、まず様式を試すところから始められます。


