
ビルメンの採用が集まらない5つの原因と打ち手|60歳以上46.7%時代の採用設計【2026年版】
ビルメンの採用難とは、応募者の絶対数不足だけでなく、応募段階のネガティブ拡散・選考辞退・早期離職など採用ファネル全段階での詰まりが連鎖する構造的問題を指します。中小ビルメンでは限られた採用予算と工数でこの連鎖を解く設計が必要です。
「求人媒体に出しても応募が来ない」「面接を設定しても当日来ない」「入社しても3か月で辞める」――ビルメン業界で採用に関わる方の多くがこのいずれかを経験しています。公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会のデータによれば、ビルクリーニング業界では60歳以上が46.7%を占める一方、40歳未満は12.2%にとどまっています。
本記事では、ビルメン採用が集まらない原因を採用ファネルの5段階に分解し、20〜40名規模の中小ビルメン会社が限られた採用予算と工数で打てる対策を整理します。求人転職メディアの「やめとけ」記事ではなく、経営側視点での採用設計に絞った内容です。

ビルメン採用難の現在地

採用がうまくいかない時に「応募者が少ない」と一括りにすると、本当の詰まり原因が見えなくなります。まずは現在地のデータと、ファネルでの捉え方を整理します。
60歳以上が46.7%、40歳未満は12.2%
公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会の調査によれば、一般清掃業務に従事している従業員のうち、60歳以上が46.7%を占めています。40歳未満は12.2%にとどまっており、業界全体で見ると高齢層に著しく偏った人員構成です。この構造のまま10年が経過すると、現役世代が抜けた後の業務継続が困難になります。
| 年齢層 | 構成比 | 業界視点 |
|---|---|---|
| 60歳以上 | 約46.7% | 退職リスクが連続的に発生 |
| 40歳以上60歳未満 | 約41.1% | 中核戦力だが採用余地は限定的 |
| 40歳未満 | 約12.2% | 全国平均より大幅に低い |
出典: 公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会の実態調査結果に基づきます。
「採用できない」ではなくファネルのどこで詰まるかで見る
採用は5段階のファネルとして捉えると、どこに投資すべきかが明確になります。
| 段階 | 主な詰まり原因 |
|---|---|
| 認知 | 業界・自社の存在を知られていない |
| 応募 | 検索で「やめとけ」がヒット、求人原稿が刺さらない |
| 選考 | 賃金・キャリアパスの説明不足で辞退 |
| 内定 | 競合他社と比較され負ける |
| 定着 | 入社後90日以内の早期離職 |
応募が来ない問題は応募段階だけの問題ではなく、認知段階の発信不足が原因のこともあります。逆に応募は来ているが採用に至らない場合は選考・内定段階の設計問題です。
原因1: 業務イメージのネガティブ拡散(応募段階の詰まり)
「ビルメン」「清掃 仕事」で検索すると、「やめとけ」「きつい」「向いてる人」といった求職者向けの体験談記事が上位を占めます。これは応募者が応募ボタンを押す直前に確実に目にする情報です。
検索すると「やめとけ」「きつい」が上位を占める構造
求職者は応募前に必ず職種名で検索します。検索結果の1ページ目がネガティブ記事で埋まっていると、応募意向が確実に下がります。これは個社の努力では変えられない構造ですが、自社側で打ち消す発信は可能です。
自社の発信で打ち消す3つの観点
短期で取り組めるのは次の3点です。
- 自社採用ページに現場社員の声を載せる: 「実際の1日」「入社して変わったこと」を本人写真付きで掲載
- Googleビジネスプロフィール(旧マイビジネス)の整備: 自社名検索で会社の正しい情報が出るようにする
- SNSで日常業務を発信: 過度な美化ではなく、業務の実際を短時間動画で発信
この3点はいずれも追加コストが少なく、月10時間程度の運用工数で開始できます。
原因2: 賃金とキャリアパスの不透明さ(選考段階の辞退)
応募が来ても、面接で賃金とキャリアパスの説明が曖昧だと選考辞退率が高まります。求職者は他社と比較したうえで応募しており、説明が抽象的だと「やはり他社にしよう」と判断します。
業務内容と賃金のミスマッチ
中小ビルメンに多いのが、「業務内容に対して賃金が見合わない」と感じられて辞退されるケースです。これは賃金水準そのものではなく、業務範囲と賃金の対応関係が説明できていないことが原因の場合があります。
資格手当・キャリアラダーを明文化する
中期施策として、資格手当の金額と取得支援、昇給ルール、管理職への登用条件を1枚資料にまとめます。これを面接時に必ず渡すと、選考辞退率が体感で大きく下がります。
ビルメンHUBの人事管理機能を使うと、保有資格・取得予定資格・昇給履歴を一元管理できます。面接資料・社内ラダー資料への流用が容易になります。
原因3: 採用予算と工数の不足(中小特有の制約)
大手と同じ採用手法をそのまま真似ても、中小ビルメンは予算と工数で勝負になりません。中小特有の制約下で勝てる順序があります。

月◯万円の採用予算でどう動くか
採用予算が月5〜20万円規模の中小ビルメンが取るべき優先順位は、コストパフォーマンスの高い順に並べると次のとおりです。
| 優先順位 | 手法 | 想定単価 | 中小での適合度 |
|---|---|---|---|
| 1 | リファラル採用(社員紹介) | 紹介手当2〜5万円 | 高い(信頼ベースで定着率も高い) |
| 2 | 地域ハローワーク・地元媒体 | 無料〜低額 | 中(地域密着型に有効) |
| 3 | 自社採用ページ + SNS | 制作費+月3〜10万円 | 中(中長期で効く) |
| 4 | 大手求人媒体 | 月20〜50万円 | 低(予算規模が合わないことが多い) |
リファラル採用は紹介手当を社員に明示し、半年後の定着確認時に追加支給する2段階設計にすると、紹介後のミスマッチも減ります。
リファラル採用・地域ハローワーク・SNSの順で投資する
中小ビルメンが大手と同じ予算配分で大手求人媒体に頼ると、応募単価で負けます。まずリファラルと地域施策で確実に取り、次にSNS・自社採用ページで中期の母集団を作るのが基本順序です。
原因4: 早期離職(入社後の定着失敗)

採用できても、入社後90日以内に離職されると採用コストは無に帰します。早期離職の8割は「入社前の説明と実際の業務のギャップ」に起因します。
初日〜90日の定着プログラム
新入社員の定着率を上げる施策はシンプルです。
- 初日: 配属物件の見学+ベテランからの業務概要説明(最低2時間)
- 1週目: 業務マニュアル説明+現場OJTを2件
- 2〜4週目: 単独業務開始+週1回の振り返り面談
- 30日目: 賃金・労務条件の再確認+本人からの不満ヒアリング
- 90日目: 本人・上長双方からの定着確認+次のキャリア提示
これを社内手順書として明文化し、各拠点で同じ運用にすると、早期離職率は半分以下に下がるケースが多くあります。
シフト管理の負担軽減
新入社員の早期離職原因として「シフトが急に変わる」「希望が通らない」も上位を占めます。シフト管理の仕組み化は清掃業のシフト管理を効率化する6つのコツで詳しく扱います。
原因5: 外国人材活用の遅れ(採用源の偏り)

国内日本人材だけで採用を続けると、業界全体で構造的に供給が不足します。外国人材の活用は2020年代の業界共通テーマです。
特定技能「ビルクリーニング」分野の制度概要
特定技能制度は、人手不足分野で外国人材を受け入れるための在留資格です。「ビルクリーニング」は対象分野の1つで、業界団体の認定試験合格者が在留資格を取得できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 在留期間 | 通算最長5年(特定技能1号) |
| 業務範囲 | 建築物内部の清掃 |
| 受入要件 | 認定試験合格+日本語試験合格 |
| 受入機関の要件 | 支援計画の作成・実施体制 |
制度の詳細は出入国在留管理庁の公式情報を必ず確認してください。
受け入れ前の準備(管理体制・言語サポート)
受け入れ前に整えるべきは、生活支援担当者の指名、宿舎・通勤手段の確保、業務マニュアルの多言語化(最低限、図解中心化)の3点です。これらの準備なしに受け入れると、入社後トラブルで定着しません。
「採用しなくて済む」業務削減という第6の選択肢
採用施策に加えて、そもそも採用しなくて済むよう業務量を減らす選択肢も並行して検討すべきです。
多能工化で必要人数を減らす
清掃・設備・警備のうち2業務以上を兼務できる「多能工」の育成は、必要人数の絶対量を減らします。多能工化の進め方はビルメンテナンスの多能工化を進める5ステップで扱います。
DX・案件管理一元化で間接工数を圧縮
書類作成・報告書・連絡調整といった間接工数は、案件管理ツールの導入で大幅に削減できます。間接工数を10%圧縮できれば、実質的に従業員1〜2名分の余力が生まれます。詳細はビルメンテナンス業界の業務効率化7つの方法で解説しています。
よくある質問
Q1. リファラル採用の紹介手当はいくらに設定するのが適切ですか?
業界平均では紹介時2〜3万円、半年後定着時に追加2〜3万円の2段階設計が多く見られます。一括ではなく分割すると、紹介後のミスマッチも防げます。
Q2. 大手求人媒体は使うべきではないですか?
中小ビルメンの月予算が30万円以上ある場合は併用する価値があります。それ未満なら、まずリファラル・地域ハローワーク・自社採用ページに集中投資する方が応募単価で有利です。
Q3. 特定技能の受け入れには何か月かかりますか?
受け入れ準備(支援計画作成・宿舎手配)、特定技能評価試験のスケジュール、在留資格認定証明書交付申請、ビザ申請のすべてを含めると、初回は半年〜1年程度を見込んでください。
Q4. 早期離職を防ぐ最も効果的な施策は何ですか?
初日〜90日の定着プログラムを明文化し、全拠点で同じ運用にすることです。属人運用だと拠点間で定着率が大きく分かれます。
Q5. 採用ページに載せるべき必須項目は何ですか?
賃金・勤務時間・休日・資格手当・キャリアラダー・現場社員の声・1日のスケジュールの7項目です。曖昧なまま採用フローに乗せると、選考段階で他社に競り負けます。
まとめ
ビルメン採用難は5段階のファネルで分解すると、それぞれの段階で打てる対策が見えてきます。中小ビルメンが取るべき順序は、(1)応募段階のネガティブ拡散の自社発信での打ち消し、(2)選考段階の賃金・キャリアラダー明文化、(3)中小予算に合った媒体選択、(4)入社後90日の定着プログラム、(5)外国人材の段階的受け入れ、です。同時に多能工化・DXで「採用しなくて済む業務量」を減らす両輪が、構造的人手不足時代の現実解です。
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