清掃業の人手不足|採用と並行で進める省人化・多能工化の打ち手【2026年】
業界動向・トレンド

清掃業の人手不足|採用と並行で進める省人化・多能工化の打ち手【2026年】

2026年6月6日22分で読める

清掃業の人手不足は、求人広告や賃上げだけでは構造的に解消が難しい段階に入っています。背景には従事者の高齢化と労働集約型のビジネスモデルがあり、採用施策と並行して省人化・多能工化を進めることが、中小規模の清掃会社にとって現実的な解決策となります。

清掃業の人手不足は、経営者の感覚論ではなく公的データでも裏付けられた構造課題です。厚生労働省が令和7年6月13日に公表した「省力化投資促進プラン ―ビルメンテナンス業―」では、ビルクリーニング業の従事者のうち60代以上が57.9%、70代以上が27.0% を占めると指摘されています。多くの記事は「外国人採用」「求人広告強化」を打ち手として紹介しますが、採用市場そのものが縮んでいる以上、採用施策だけで人員ギャップを埋め切るのは難しい局面です。

本記事では、清掃業の人手不足の現状を公的データで整理し、採用施策3パターンの限界を確認したうえで、採用と並行で進めるべき省人化・多能工化の打ち手を、20〜40名規模の清掃会社・ビルメン会社の視点で解説します。

清掃業の人手不足の構造と打ち手の全体像を示す図
清掃業の人手不足の構造と打ち手の全体像を示す図

清掃業の人手不足の現状|公的データで見る構造課題

清掃業の人手不足は、求人倍率と従事者構成の2つの指標で全体像を把握できます。

ビルクリーニング業の従事者構成(厚労省データ)

ビルクリーニング業の従事者高齢化とパート比率を厚労省データで可視化した図
ビルクリーニング業の従事者高齢化とパート比率を厚労省データで可視化した図

厚生労働省「省力化投資促進プラン ―ビルメンテナンス業―」(令和7年6月13日)は、ビルクリーニング業の従事者構成を以下のように整理しています。

項目構成比出典
60代以上の従事者57.9%厚労省 省力化投資促進プラン
70代以上の従事者27.0%厚労省 省力化投資促進プラン
パート・アルバイト約4分の3厚労省 省力化投資促進プラン
ビルメンテナンス業全体に占めるビルクリーニング業約80%厚労省 省力化投資促進プラン

注目すべきは、従事者の半数以上が60代以上である点と、4分の3がパート・アルバイトである点です。フルタイムの現役世代をターゲットにした採用設計だけでは、現場の主力層を確保できない構造になっています。

公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会の「ビルメンテナンス情報年鑑」(毎年公表)でも、業界の高齢化と人材確保難は継続的な課題として取り上げられており、複数の公的・業界調査が同じ方向性を示しています。

採用市場の構造変化

清掃業の有効求人倍率は他業種と比較しても高い水準で推移しており、複数の求人を出しても応募が集まらない状況が続いています。背景には3つの要素があります。

  • 生産年齢人口(15〜64歳)の継続的な減少
  • 清掃業の心理的・肉体的負担に対する求職者の忌避感
  • 賃金水準と業務難易度のアンバランス

求人広告の出稿コストを増やしても応募が増えにくいのは、業界の母集団そのものが縮んでいるためです。「採用施策を強化すれば解決する」という前提は、すでに成立しにくい局面にあります。

厚労省「省力化投資促進プラン」が示す方向性

厚労省プランは、ビルメンテナンス業の労働生産性を2029年度までに2024年度比で25%向上させる目標を掲げています。プランの中で挙げられている代表的な施策は以下です。

  • 平坦な区画(ロビー・客室フロア等)への清掃ロボット導入
  • 勤怠管理システムによる現場作業者・パート従事者の管理効率化
  • IT導入補助金・中小企業省力化投資補助金等の活用

つまり国の方針も「採用の前にまず省人化」という方向に動いています。清掃業界の構造的な人手不足を補助金で後押ししながら、テクノロジーで補完していく流れが明確になっています。補助金活用の具体的な論点はビルメンのデジタル化・AI導入補助金ガイドで整理しています。

採用施策3パターンと限界

人手不足への対処として一般的に挙げられる採用施策は3つあります。それぞれの効果と限界を整理します。

清掃業の採用施策3パターンと限界を比較する図
清掃業の採用施策3パターンと限界を比較する図

求人広告の改善

最も着手しやすいのが、求人広告の見直しです。掲載媒体の見直し、訴求文の改善、賃金条件の引き上げといった打ち手が中心になります。

  • 短期的な応募増加には一定の効果が見込める
  • 賃金引き上げは継続コストとして利益率を圧迫する
  • 母集団そのものが縮んでいる以上、コストパフォーマンスが年々悪化する

求人広告は「やめる」のではなく、「依存度を下げる」発想が現実的です。

紹介・リファラル採用

既存スタッフから知人を紹介してもらうリファラル採用は、現場との相性が良い人材が集まりやすく、定着率も高めに出る傾向があります。

  • 採用コストが広告に比べて低い
  • 紹介者の人脈に依存するため、規模が拡大しにくい
  • 既存スタッフが高齢化していると、紹介できる候補者の幅も狭くなる

紹介制度を導入する場合は、紹介報酬の設計と、紹介してもらいたい人物像の明文化がセットで必要です。

外国人材活用(特定技能)

ビルクリーニング職種は特定技能1号の対象分野で、外国人材の活用が制度的に可能です。

  • 母集団が国内市場に閉じないため、採用余地は広い
  • 在留資格手続き・住居支援・教育コストが発生する
  • 受入企業として求められる体制整備(登録支援機関との連携等)が前提

特定技能は単独の打ち手というより、求人広告・リファラルと組み合わせて採用ポートフォリオの一部に組み込む打ち手として位置付けるのが現実的です。

3パターンの共通する限界

3つの採用施策は、いずれも「必要人員を確保する」発想に立っています。しかし業界全体の労働人口が縮小している以上、確保できる総数には上限があります。長期的には、「必要人員そのものを減らす」発想と組み合わせなければ、人員ギャップは埋まりません。

業界の中長期トレンドはビルメンテナンス業界の将来性・人材育成課題で整理しています。

採用と並行で進める省人化・多能工化

採用施策を続けながら、必要人員そのものを減らす省人化を同時並行で進めることが、中小規模の清掃会社にとって最も現実的な解決策です。

清掃業の省人化3ステップを示す図
清掃業の省人化3ステップを示す図

業務棚卸しで「やめる業務」を決める

省人化の第一歩は、ツール導入ではなく業務棚卸しです。今やっている業務の中に「やめても問題ない作業」「頻度を下げてよい作業」が必ず含まれています。

  • 月次レポートの紙出力をデータ提出に切り替える
  • 過剰な作業ステップ(重複した点検・転記)を統廃合する
  • 顧客との契約仕様を見直し、頻度・範囲を再合意する

業務量を減らさずにツールだけ入れると、ツールが新しい業務(入力作業)を生んでしまうケースがあります。棚卸し→削減→ツール化の順序を守ることが重要です。

多能工化で必要人員を減らす

多能工化は、1人の担当者が複数業務を担えるよう育成し、配置効率を上げる打ち手です。清掃と設備管理の隣接領域、清掃と簡単な巡回点検など、業務をまたいで担当できる人員を増やすことで、巡回1人当たりのカバー物件数が増えます。

  • 配置の柔軟性が上がり、欠員時の対応が容易になる
  • スタッフのキャリアパスが広がり、定着率向上にもつながる
  • 教育コストが先行投資として発生する

多能工化の進め方はビルメンテナンスの多能工化|清掃・設備の境界をまたぐ育成設計で詳説しています。

ツール導入で1人当たり生産性を上げる

棚卸しと多能工化を進めたうえで、ツール導入による生産性向上を組み合わせます。清掃業で着手効果が出やすい領域は以下です。

ツール導入は補助金との相性が良く、IT導入補助金・中小企業省力化投資補助金を活用することで、初期投資の負担を抑えながら進められます。

離職率を下げる現場運営

離職率を下げる現場運営のシフト柔軟化と評価制度2軸を示す図
離職率を下げる現場運営のシフト柔軟化と評価制度2軸を示す図

採用と省人化を進めても、離職率が高ければ穴の空いたバケツに水を注ぐ状態が続きます。離職を抑える現場運営の論点は、シフト柔軟化と評価制度の2つに集約されます。

直行直帰・シフト柔軟化

清掃業の現場は、出退勤の負担が離職要因の上位に入ります。事務所への往復時間・打刻のための立ち寄りを減らす運用設計が、現場の負担感を直接下げます。

  • 直行直帰を前提にしたモバイル打刻の導入
  • 物件と担当者の距離を考慮したシフト編成
  • 短時間シフト・分割シフトの柔軟な組み合わせ

シフト編成の具体論は清掃シフト管理の最適化で整理しています。

評価制度と賃金引き上げ

賃金引き上げは継続コストとして利益率を圧迫しますが、評価制度とセットで設計すれば、頑張ったスタッフに報いる仕組みとして機能します。

  • 物件規模・難易度に応じた等級設計
  • 多能工化を進めたスタッフへの手当上乗せ
  • 顧客満足度・点検精度をKPIに組み込んだ評価

賃金単価の引き上げを行う場合、契約先への値上げ交渉とセットで進めることが利益率維持の前提になります。値上げ交渉の進め方は清掃業の値上げ交渉ガイドで解説しています。

よくある質問

清掃業の人手不足はどれくらい深刻ですか

厚生労働省「省力化投資促進プラン ―ビルメンテナンス業―」(令和7年6月13日)によれば、ビルクリーニング業の従事者は60代以上が57.9%、70代以上が27.0%を占めており、パート・アルバイトが約4分の3を占めるという構造になっています。生産年齢人口の減少が続くなか、現役世代の採用だけで人員ギャップを埋めるのは難しい局面です。

求人広告の出稿を増やせば応募は集まりますか

短期的には一定の応募増加が見込めますが、清掃業界全体の労働人口が縮小しているため、コストパフォーマンスは年々悪化しています。求人広告は「やめる」のではなく「依存度を下げる」発想で、紹介採用・特定技能・省人化と組み合わせる前提で考えるのが現実的です。

外国人材の活用は中小企業でも可能ですか

ビルクリーニング職種は特定技能1号の対象分野で、制度的には中小企業でも活用可能です。ただし在留資格手続き・住居支援・教育コスト・登録支援機関との連携など、受入企業に求められる体制整備が前提となります。採用ポートフォリオの一部として組み込むのが現実的です。

省人化と多能工化はどちらから手を付けるべきですか

業務棚卸し(やめる業務を決める)→多能工化→ツール導入の順序が定石です。業務量を減らさずにツールを導入すると、ツールが新しい入力業務を生んでしまうケースがあります。まず削減できる業務を特定し、次に1人当たりのカバー範囲を広げる多能工化に着手します。

ツール導入のための補助金はありますか

厚労省「省力化投資促進プラン ―ビルメンテナンス業―」では、IT導入補助金・中小企業省力化投資補助金等が活用候補として挙げられています。補助対象・申請時期・採択要件は年度ごとに変動するため、最新の公募要領を確認したうえで申請計画を立てる必要があります。詳細はビルメンのデジタル化・AI導入補助金ガイドを参照してください。

まとめ|採用と省人化を同列で進める

清掃業の人手不足は、厚労省「省力化投資促進プラン ―ビルメンテナンス業―」が示すとおり、従事者の高齢化と労働集約型のビジネスモデルに起因する構造課題です。求人広告・紹介・特定技能の採用3施策は引き続き必要ですが、いずれも「必要人員を確保する」発想にとどまっており、業界全体の労働人口が縮小する局面では限界があります。

採用と並行して、業務棚卸し→多能工化→ツール導入の順で省人化を進め、必要人員そのものを減らす設計が中長期の解になります。離職率を下げる現場運営(直行直帰・シフト柔軟化・評価制度)を組み合わせれば、現有人員でカバーできる物件数を増やしながら、定着率の改善も狙えます。

設備管理を含むビルメン業の全体像は設備管理とは|業務内容・必要な体制【2026年】、業務効率化の打ち手はビルメンテナンス業の業務効率化ガイドを合わせてお読みください。


ビルメンの業務を、もっとシンプルに。

ビルメンHUBは、清掃・設備管理の案件管理・顧客管理・シフト管理・見積書作成をひとつにまとめたクラウドツールです。物件別の対応履歴・担当者の稼働状況・点検カレンダーを、1つのデータベースで管理できます。

まずは無料トライアルで全機能をお試しください。

無料で始める →

導入のご相談もお気軽にどうぞ。


関連記事