清掃業の利益率を上げる経営術|20〜40名規模が押さえる3軸【2026年】
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清掃業の利益率を上げる経営術|20〜40名規模が押さえる3軸【2026年】

ビルメンHUB編集部
2026年6月3日26分で読める

清掃業の利益率は、原価管理・案件単価・継続率の3軸を同時に動かすことで初めて安定的に改善します。20〜40名規模の法人清掃会社では、人件費比率と移動時間が利益を圧迫しやすく、単発の値上げや原価カットだけでは限界があります。本記事では3軸の具体的な打ち手と、優先順位の決め方を経営目線で整理します。

清掃業の利益率は、業界全体として「薄利」と言われ続けてきた領域です。人件費比率が高く、移動時間・教育コスト・離職率の高さが利益を削る構造があり、20〜40名規模の中小清掃会社では特に「忙しいのに利益が残らない」状態に陥りやすい業種です。

それにもかかわらず、利益率改善というと「値上げ交渉」や「人件費カット」といった単発の打ち手に偏りがちで、構造的な改善に手が回らないケースが目立ちます。結果として、年間で見ると利益率が横ばい、あるいは緩やかに下降していくパターンが少なくありません。

本記事では、まず清掃業の利益率の現状と構造的要因を整理し、20〜40名規模の法人清掃会社が押さえるべき3軸(原価管理・案件単価・継続率)の打ち手を解説します。後半では3軸を同時に動かすための優先順位と、運用に落とすための実務テクニックを取り上げます。

清掃業の利益率を上げる3軸の全体像
清掃業の利益率を上げる3軸の全体像

清掃業の利益率の現状(早見表)

清掃業の利益率を考えるときは、売上総利益率(粗利率)と営業利益率の2つを分けて見るのが基本です。粗利率は「現場の原価管理」、営業利益率は「本社経費を含めた経営全体」の指標と捉えると、改善の打ち手が整理しやすくなります。

指標中小清掃会社の業界目安主な変動要因
売上総利益率(粗利率)30〜40%程度人件費比率・資材費・移動効率
営業利益率5〜15%程度本社人件費・営業コスト・受注ロスト
人件費比率売上の50〜65%程度直行直帰率・スキル単価・社保料
移動時間比率拘束時間の10〜20%程度物件密度・ルート設計

※業界の経験則・実務感覚として一般的に語られる水準。実際の数値は会社規模・事業構成・地域で大きく変動するため、自社の決算書と比較するのが現実的です。

一般的な目安(粗利率35〜40%・営業利益率10%前後)

中小清掃会社の業界感覚として、粗利率35〜40%、営業利益率10%前後が一つの目安として語られることが多い水準です。粗利率がこの帯を下回っている場合、現場原価のどこかに構造的な問題が潜んでいる可能性が高くなります。

ただし、この目安は事業構成(日常清掃中心か、定期清掃やスポット中心か)で大きく変わります。日常清掃比率が高い会社は粗利率が低めになりやすく、定期・スポット中心の会社は粗利率が高めに出る傾向があるのが実務感覚です。

利益率を下げる構造的要因

清掃業の利益率が伸びにくい背景には、業種特有の3つの構造的要因があります。1つ目は人件費比率の高さ、2つ目は移動時間の長さ、3つ目は契約の単年度更新リスクです。

人件費比率は売上の半分以上を占めることが多く、最低賃金の上昇と社会保険料の負担増がそのまま利益を圧迫します。移動時間は売上に直結しない拘束時間として積み上がり、物件配置の悪さがそのまま赤字案件を生みます。契約は単年度更新が一般的で、解約や値下げ要求のリスクが毎年訪れる構造になっています。

軸1: 原価管理の徹底

原価管理は、利益率改善の最も基本となる軸です。人件費・資材費・移動コストの3要素を案件単位で把握できる仕組みを作ることが、ほかのすべての打ち手の土台になります。

人件費(生産性指標・社保料)

清掃業の人件費は、売上の50〜65%を占めることが珍しくありません。改善の起点は「1人時あたりの売上(人時生産性)」を案件別に算出し、低い案件から順に改善対象として並べることです。

人時生産性が低い案件は、仕様が過剰、移動が長い、スキル不足の人材を割り当てている、のいずれかが原因であるケースが多くなります。原因が特定できれば、仕様見直し・人員入れ替え・教育投資のどれを打つかが判断しやすくなります。

社会保険料は中小清掃会社にとって構造的な負担増要因です。週20時間未満のパート活用と、フルタイム正社員の人時生産性向上を組み合わせて、社保料負担と離職リスクのバランスを取るのが現実的な設計です。

資材費・経費の最適化

資材費は売上比5〜10%程度が業界の経験則ですが、仕入先見直しと共同購入で大きく改善できる余地が残っているケースが多い項目です。洗剤・モップ・ワックスといった消耗品は、年単位の使用量と単価を物件別に集計し、まとめ買い交渉に持ち込むのが第一歩になります。

道具・機材は購入とリースの選択も利益率に影響します。年に数回しか使わない高価機材(ポリッシャー・高所作業機など)はリースまたは外注に切り替えると、固定費を変動費化できます。

ルート最適化と移動時間

移動時間は売上ゼロの拘束時間です。物件の地理的密度を上げ、1日のルートを「半径3km以内に集約」「同じエリアの物件をブロック単位で受注」といった発想で組み直すと、移動時間比率を5%以上削減できる余地が出てきます。

直行直帰の運用設計も移動時間圧縮に直結します。事務所集合・解散をやめて現場直行に切り替えるだけで、1日あたり30〜60分の拘束時間を売上時間に転換できるケースがあります。/blog/cleaning-shift-management で解説したシフト編成の最適化と組み合わせて運用するのが現実的です。

清掃業の原価管理3要素と改善の優先順位
清掃業の原価管理3要素と改善の優先順位

軸2: 案件単価の引き上げ

案件単価を引き上げる3手法(既存値上げ・パッケージ化・専門領域展開)の対比図
案件単価を引き上げる3手法(既存値上げ・パッケージ化・専門領域展開)の対比図

原価管理が「コストを下げる」打ち手だとすると、案件単価の引き上げは「売上を上げる」打ち手です。両者を同時に動かすことで初めて、利益率が二桁の改善幅で動き始めます。

既存案件の値上げ

既存顧客への値上げ交渉は、新規開拓よりも投資対効果が高い打ち手です。最低賃金上昇・燃料費高騰・社会保険料増加といった外部要因を根拠に、契約更新タイミングで5〜10%程度の値上げを提案するのが現実的なレンジです。

値上げ交渉の成功率は、根拠資料の準備と提案タイミングで大きく変わります。原価上昇分を案件単位で数字に落とし込んだ資料を準備し、契約更新の3ヶ月前から段階的に説明していくのが定石です。/blog/cleaning-price-negotiation で解説した交渉スクリプトと組み合わせると、解約リスクを抑えながら値上げを通せる確度が上がります。

パッケージ化で単価アップ

日常清掃の単価だけで勝負すると、価格競争に巻き込まれて利益率が下がりやすくなります。日常清掃に「定期床洗浄」「ガラス清掃」「エアコン洗浄」などをパッケージ化して提案すると、月額単価を1.3〜1.5倍に引き上げる余地が生まれます。

パッケージ化のメリットは単価だけではありません。複数メニューを束ねることで顧客の解約コストが上がり、継続率の向上にも繋がります。後述の軸3「継続率の向上」とも相乗効果が生まれる打ち手です。

専門性の高い領域への展開

汎用的な日常清掃は競合が多く、価格競争になりやすい領域です。一方で、医療・調剤薬局向け、食品工場向け、データセンター向けといった「専門性が必要な領域」は、参入障壁が高い分、単価も粗利率も高く取れる傾向があります。

専門領域への展開は教育投資が必要ですが、1〜2年スパンで人材を育成すれば、汎用領域の1.5〜2倍の単価で受注できるケースが現実的に存在します。20〜40名規模の清掃会社にとっては、利益率改善の中長期的な打ち手として有効です。

軸3: 継続率の向上

継続率を上げる3施策(クレーム削減・契約更新管理・アップセル)と長期インパクトの図
継続率を上げる3施策(クレーム削減・契約更新管理・アップセル)と長期インパクトの図

継続率は、利益率に対する影響が見えにくい指標ですが、長期的には最もインパクトが大きい軸です。新規開拓には1案件あたり数十万円の営業コストがかかるのに対し、継続案件は営業コストがほぼゼロになります。

クレーム削減

クレームは継続率を直接下げる要因です。クレームが発生した案件は、解約リスクが平常時の3〜5倍に跳ね上がるという感覚を多くの清掃会社経営者が共有しています。

クレーム削減の起点は、現場の品質ばらつきを抑えることです。仕様書の詳細化、チェックリストの導入、写真記録の標準化を組み合わせて、誰が現場に入っても一定品質が出る仕組みを作ります。/blog/cleaning-complaint-response で解説したクレーム対応フローと合わせて運用するのが現実的です。

契約更新管理の自動化

契約更新は、清掃会社にとって毎年訪れる「解約リスクのピーク」です。更新時期を事前に把握し、3ヶ月前から顧客への提案準備を始められる会社と、更新直前に慌てる会社では、継続率に明確な差が出ます。

更新管理を属人化させず、契約終了日・更新提案日・値上げ提案日を案件単位で記録する仕組みがあれば、解約リスクの早期検知と先回り提案が可能になります。

アップセル・クロスセル

既存顧客への追加提案は、新規開拓の数倍の効率で売上を伸ばせる打ち手です。日常清掃の顧客に定期床洗浄を、定期清掃の顧客にエアコン洗浄を、というように、顧客の現状契約から自然に派生するメニューを提案するのが定石です。

アップセル提案の成功率は、現場スタッフが顧客現場で気付いた「追加ニーズの種」をどれだけ吸い上げられるかで決まります。スタッフから営業へのフィードバックパスを仕組み化することが、アップセル文化の出発点です。

ビルメンHUBで顧客ごとの契約更新日・原価率・スタッフからの提案ネタを一元管理すれば、3軸の打ち手を運用に落とし込みやすくなります。

3軸を同時に進める優先順位の決め方

原価管理・案件単価・継続率の3軸は、本来同時に動かすのが理想です。しかし、20〜40名規模の中小清掃会社では人的リソースに制約があるため、自社の現状に合わせて優先順位を決める必要があります。

3軸の優先順位を決めるフローチャート
3軸の優先順位を決めるフローチャート

判断軸はシンプルで、「現状のボトルネックがどこにあるか」を見極めることです。粗利率が業界目安を下回っている場合は原価管理が最優先、粗利率は確保できているが営業利益が薄い場合は案件単価か継続率の改善が優先、というように、決算書の指標から逆算していきます。

現状の指標優先軸期待される効果
粗利率30%以下軸1: 原価管理粗利率5〜10ポイント改善
粗利率35%以上・営業利益5%以下軸2: 案件単価案件単価10〜30%改善
新規開拓コストが高い・解約多発軸3: 継続率解約率2〜5ポイント改善
全指標が業界目安付近軸2+軸3を並走長期的な利益率の底上げ

3軸は独立しているように見えますが、実際は連動しています。原価管理を進めると現場の品質が安定し、結果としてクレームが減って継続率が向上します。継続率が上がると新規開拓コストが下がり、その分を案件単価の改善や原価管理のシステム投資に回せます。

最初の1軸を選び、3〜6ヶ月で目に見える成果を出し、次の軸に進む。この順番で取り組むのが、20〜40名規模の中小清掃会社にとって現実的な改善ステップです。

よくある質問

Q. 清掃業の利益率の業界目安はどれくらいですか? A. 中小清掃会社の業界感覚として、売上総利益率(粗利率)30〜40%、営業利益率5〜15%程度が一つの目安として語られることが多い水準です。事業構成(日常清掃中心か、定期・スポット中心か)や地域、会社規模で大きく変動するため、自社の決算書と業界目安を比較し、ボトルネックがどこにあるかを把握するのが第一歩です。

Q. 利益率を上げるには、まず何から手をつけるべきですか? A. 自社の粗利率と営業利益率を確認し、粗利率が業界目安を下回っている場合は原価管理(軸1)が最優先、粗利率は確保できているが営業利益が薄い場合は案件単価(軸2)または継続率(軸3)の改善が優先になります。3軸を同時に動かすのが理想ですが、20〜40名規模では人的リソースに制約があるため、ボトルネックから順に取り組むのが現実的です。

Q. 既存案件の値上げ交渉はどのくらい上がりますか? A. 最低賃金上昇・社会保険料負担増・燃料費高騰といった外部要因を根拠にする場合、契約更新タイミングで5〜10%程度の値上げが現実的なレンジとされます。値上げ幅は根拠資料の準備と提案タイミングで大きく変わるため、原価上昇分を案件単位で数字に落とし込んだ資料を準備し、契約更新の3ヶ月前から段階的に説明していくのが定石です。

Q. 継続率を上げる最も効果的な打ち手は何ですか? A. クレーム削減が最も即効性のある打ち手です。クレームが発生した案件は解約リスクが平常時の数倍に跳ね上がる傾向があり、仕様書の詳細化・チェックリスト導入・写真記録の標準化で現場の品質ばらつきを抑えることが、継続率改善の出発点になります。中長期的には契約更新管理の自動化とアップセル文化の仕組み化が効いてきます。

Q. 20〜40名規模で、原価管理にどこまで投資すべきですか? A. まずは案件別の人時生産性と原価率が見える状態を作ることが投資判断の出発点です。Excel管理では限界が出る規模感のため、案件管理・原価管理・契約更新管理を1つにまとめられるクラウドツールへの月数万円規模の投資は、利益率改善の効果から見て十分にペイするレンジです。導入後の運用設計まで含めて、3〜6ヶ月で効果検証する前提で進めるのが現実的です。

まとめ

清掃業の利益率は、原価管理・案件単価・継続率の3軸を同時に動かすことで初めて構造的に改善します。20〜40名規模の中小清掃会社では人的リソースの制約があるため、自社の決算書から見えるボトルネックに優先順位をつけ、3〜6ヶ月単位で1軸ずつ成果を出していくのが現実的な改善ステップです。単発の値上げや人件費カットだけでは限界があり、3軸を連動させる経営目線が利益率の底上げに繋がります。

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