
ホテル清掃の受注と客室清掃の実務|1室あたり作業時間と必要人員の試算【2026年版】
ホテル清掃の受注は、チェックアウトからチェックインまでの短時間に客室を回転させる日次大量作業が核で、客室数×1室あたり標準作業時間から必要人員を積み上げ、パブリックエリアの定期清掃と分けて設計するのが基本です。
ホテル清掃は、限られた時間に多数の客室を仕上げる回転作業と、ロビーや大浴場などのパブリックエリア清掃が同時に走る特殊な現場です。「1室あたり何分か」「客室数に対して何人配置すべきか」が曖昧なまま受注すると、ピーク時間帯に人が足りず回転漏れが起き、逆に閑散日は人が余って採算が崩れます。
本記事では、客室タイプ別の1室あたり標準作業時間と客室数別の必要人員試算表、パブリックエリアの頻度設計を早見表で示します。あわせて、旅館業法・厚生労働省の衛生等管理要領で押さえる衛生基準と、受注後のオペレーション仕組み化まで、5〜30名規模の清掃会社の視点で整理します。

ホテル清掃受注の全体像|3区分と契約タイプをまず押さえる

ホテル清掃は「客室清掃・パブリックエリア・定期特別清掃」の3区分で考える
ホテル清掃は大きく3つに分かれます。(1)客室清掃はチェックアウト連動の日次大量作業、(2)パブリックエリア清掃はロビー・廊下・トイレ・大浴場など共用部の定期作業、(3)定期特別清掃はカーペット洗浄・窓ガラス・貯水槽など周期の長い専門作業です。作業サイクルと必要スキルが異なるため、見積・シフト・人員配置は区分ごとに設計するのが原則です。3区分を混ぜて一括見積にすると、どの作業で赤字が出ているか後から追えなくなります。
受注形態と契約タイプ(客室単価制/常駐制/スポット)の違いと選び方
受注形態は主に3つです。客室単価制は清掃した客室数×単価で精算する方式で、稼働変動の大きい宿泊主体ホテルに向きます。常駐制は配置人員に対する定額で、稼働が安定し品質管理を重視する施設に向きます。定期特別清掃はスポット受注が中心です。回転数の読みにくい施設ほど、客室単価制で変動リスクを発注者と分担する設計が有効です。汎用的な新規開拓の進め方は清掃会社の新規開拓営業もあわせて参考にしてください。
客室清掃 1室あたり標準作業時間と必要人員の試算【独自データ】

客室タイプ別×清掃区分別 1室あたり標準作業時間の目安表
客室清掃は、寝具の全交換とバス清掃まで行う「チェックアウト清掃」と、連泊客室を簡易整備する「ステイ清掃」で所要時間が大きく変わります。下表は自社(YDAIコンサルティング株式会社)が支援した小規模清掃事業者の実務データを再構成した目安で、客室の広さ・アメニティ数・ベッド数・浴室の有無で変動します。自社の実測値で調整してください。
| 客室タイプ | チェックアウト清掃(全交換・バス込み) | ステイ清掃(連泊・簡易整備) |
|---|---|---|
| シングル | 約20〜30分 | 約10〜15分 |
| ツイン | 約30〜40分 | 約15〜20分 |
| スイート・和室 | 約50〜70分 | 約25〜35分 |
出所: 自社支援先の実務データを再構成した目安(実測での調整を前提とする値)。
客室数×退室回転数から積み上げる 必要人員試算表
必要人員は「1日の退室(チェックアウト)客室数 ÷ 1人が清掃時間内に回せる室数」で概算します。1室30分・実働5時間(300分)なら1人あたり約8〜10室が上限目安です。下表は稼働率とチェックアウト率から退室数を仮置きした試算で、実際の退室数と回転時間帯に合わせて増減させます。
| 総客室数 | 想定退室数(稼働の6〜7割) | 必要清掃人員(1人8〜10室) |
|---|---|---|
| 30室 | 約18〜21室 | 2〜3名 |
| 50室 | 約30〜35室 | 3〜4名 |
| 100室 | 約60〜70室 | 6〜9名 |
| 150室 | 約90〜105室 | 9〜13名 |
出所: 上表の作業時間目安から算出した試算値(退室数・回転時間帯により変動)。
チェックアウト連動でシフトを組む考え方(ピーク集中への対応)
ホテル清掃の負荷は、チェックアウト完了からチェックイン開始までの数時間に集中します。この時間帯に退室数のピークが来るため、全体を平準化した人員配置ではなくピーク時間帯に合わせて人員を厚く配置し、前後は薄くする山型のシフトが基本です。清掃順は「早期チェックイン予約が入っている客室」「団体退室フロア」を優先し、フロントの入室可能時刻から逆算します。時間帯別の必要人員をシフトに落とし込む方法は清掃業のシフト管理で解説しています。
パブリックエリア・定期特別清掃の頻度設計

パブリックエリア清掃 頻度表(ロビー/廊下/トイレ/エレベーター)
パブリックエリアは客室と作業サイクルが異なり、時間帯固定の巡回清掃が中心です。宿泊客の目に触れる場所ほど頻度を上げ、下表を基準に館内の動線と稼働に合わせて調整します。
| 対象エリア | 標準頻度の目安 |
|---|---|
| ロビー・エントランス | 日次(開店前+日中巡回) |
| 客室階廊下 | 日次 |
| 共用トイレ | 日次(複数回巡回) |
| エレベーター(かご内・操作盤) | 日次 |
| 大浴場・共用浴室 | 日次(営業前後) |
| 窓ガラス・高所 | 月次〜四半期 |
出所: 自社支援先の頻度設計を再構成した目安(施設規模・稼働により調整)。
カーペット・窓・貯水槽など定期特別清掃の周期と受注の切り出し方
カーペット洗浄・床のワックス・高所窓ガラス・貯水槽清掃などは周期が長く、専門機材や資格を要する定期特別清掃です。日常清掃とは別見積で切り出すと、追加受注として単価が確保しやすくなります。貯水槽清掃は年1回以上が目安とされ、受水槽の容量によって水道法上の管理義務がかかります(詳細は貯水槽清掃を参照)。周期作業は忘れやすいため、後述の物件マスタで次回実施日を管理します。
受注前に確認する衛生基準・見積・品質のポイント

旅館業法・厚労省衛生等管理要領で押さえるべき衛生基準
宿泊施設の衛生管理は、旅館業法と厚生労働省「旅館業における衛生等管理要領」が基準になります。旅館業法第4条は、営業者に換気・採光・照明・防湿・清潔その他宿泊者の衛生に必要な措置を義務づけ、具体的な基準は都道府県の条例で定めるとしています(同要領は令和7年4月1日改正)。受注側も、寝具の衛生的取扱い・浴室の清掃など、この要領に沿った作業設計が求められます。また、特定用途の延べ面積が3,000㎡以上のホテル・旅館は建築物衛生法の特定建築物に該当し、空気環境測定や貯水槽管理などの追加義務がかかります(建築物衛生法施行令第1条)。最新の条例基準は所轄の保健所に確認してください。
客室清掃の品質基準を写真報告で証明し値下げ圧力を防ぐ
ホテル清掃は品質のばらつきがクレームや値下げ交渉に直結します。客室ごとにビフォーアフターや重点箇所を写真で記録し、チェックリストで仕上がりを可視化すると、発注者に品質を客観的に示せます。「見た目で判断される」曖昧さを写真報告で埋めることが、単価維持と契約継続の土台になります。品質の記録が残っていれば、繁忙期の増員時にも同じ基準を新人へ引き継げます。
受注後の客室清掃オペレーションを仕組み化する
物件マスタ・シフト・写真報告・請求を1つの管理システムでつなぐ
ホテルは客室・共用部・定期作業が並行するため、物件情報・シフト・作業報告・請求を別々のExcelやLINEで回すと転記ミスと確認漏れが増えます。物件マスタに客室数・頻度・次回定期作業日を登録し、シフトと写真報告、顧客指定フォーマットの請求までを1つの管理でつなぐと、現場と事務の二重入力がなくなります。物件情報の整理は物件管理台帳、請求様式は請求書テンプレートも参考にしてください。
客室清掃で起きやすい管理課題(回転漏れ・人員過不足・請求ミス)の解決
ホテル清掃の典型的な事故は、退室客室の清掃漏れ、ピーク時間帯の人員過不足、客室単価制での清掃室数の数え違いによる請求ミスです。いずれも「誰がどの客室をいつ清掃したか」の記録が曖昧なことが原因です。作業報告を現場スマホで即時に残し、清掃済み室数を自動集計すれば、回転漏れの早期発見と請求根拠の裏づけが同時に実現します。属人的な口頭確認をシステムの記録に置き換えることが、規模拡大時の破綻を防ぎます。
よくある質問
ホテル客室清掃の1室あたりの作業時間はどのくらいですか?
チェックアウト清掃(全交換・バス清掃込み)でシングル約20〜30分、ツイン約30〜40分、ステイ(連泊・簡易整備)はその半分程度が目安です。客室の広さ・アメニティ数・ベッド数・浴室の有無で変動するため、本文の作業時間目安表を自社の実測で調整してください(数値は自社支援先の実務データを再構成した目安値)。
ホテル清掃はどうやって受注しますか(客室単価制と常駐制の違いは)?
受注は主に「客室単価制(清掃した客室数×単価で精算)」「常駐制(人員配置に対する定額)」「定期特別清掃のスポット」の3形態です。回転数の変動が大きいホテルは客室単価制、稼働が安定し品質管理を重視する施設は常駐制が向きます。区分ごとに見積を分けると採算が見えやすくなります。
客室清掃に必要な人員は何人ですか?
1日の退室(チェックアウト)客室数 ÷ 1人が清掃時間内に回せる室数で概算します。1室30分・実働5時間なら1人あたり約8〜10室が上限目安で、退室数と回転時間帯から必要人員を積み上げます。本文の客室数別 必要人員試算表を参照してください(実測での調整を前提とした目安値)。
客室清掃とパブリックエリア清掃は分けて受注すべきですか?
作業サイクルが異なるため、設計上は分けるのが基本です。客室清掃はチェックアウト連動の日次大量作業、パブリックエリア(ロビー・廊下・トイレ等)は時間帯固定の定期作業で、頻度と人員配置が別になります。見積・シフトも区分ごとに作ると採算が見えやすくなります。
ホテル客室清掃で守るべき衛生基準の根拠法は何ですか?
宿泊施設の衛生管理は旅館業法(第4条=換気・採光・清潔等の衛生措置義務)と厚生労働省「旅館業における衛生等管理要領」が基準で、寝具・浴室・清掃頻度等が定められています。延べ面積3,000㎡以上のホテルは建築物衛生法の特定建築物にも該当します(建築物衛生法施行令第1条)。具体的な条例基準は所轄の保健所に確認してください。
まとめ|ホテル清掃の受注は「時間×人員」の試算から始める
ホテル清掃の受注は、客室清掃・パブリックエリア・定期特別清掃の3区分を分けて設計することが出発点です。客室タイプ別の1室あたり作業時間と客室数別の必要人員を試算し、チェックアウト連動の山型シフトを組めば、回転漏れと人員過不足を防げます。旅館業法・衛生等管理要領の衛生基準を満たしつつ、物件管理台帳と清掃業のシフト管理で運用を仕組み化すれば、規模拡大にも耐える体制になります。まずは自社の実測値で試算表を埋めることから始めてください。
客室数を入れるだけで人員が読める
客室数別の必要人員・作業時間の試算シートと、パブリックエリア清掃の頻度チェックリストを無料配布しています。受注見積とシフト設計にそのまま使える様式で、記入例つき。物件ごとの期限管理や写真報告の運用に関心があれば、あわせてお問い合わせください。


