
清掃の業務委託・再委託契約の基礎|偽装請負を避ける契約と現場管理【2026年版】
業務委託契約(請負契約)とは、仕事の完成または業務の遂行を独立した事業者に依頼する契約形態であり、労働者派遣とは異なり、指揮命令権は委託先の事業者が自社の従業員に対して行使します。この「指揮命令の所在」が、適法な委託と違法な偽装請負の分かれ道になります。
清掃業では繁忙期や人手不足で外部委託が増えています。「現場で一緒に作業しているだけ」という感覚で続けると、気づかないうちに偽装請負に陥るリスクがあります。本記事は従業員5〜30名規模の清掃・ビルメンテナンス会社向けに、業務委託・再委託の基礎と偽装請負を避ける実務ポイントを整理します。法的判断が必要な場面では専門家への相談をお勧めします。

業務委託・請負・派遣の違い|3つの区分を早見表で整理
清掃業で外部に仕事を依頼する場合、「請負(業務委託)」「労働者派遣」「出向」といった区分があります。法律上の扱いが異なるため、自社がどの形態をとっているかを把握することが出発点です。

3つの区分 早見表
| 区分 | 契約形態 | 指揮命令権 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 請負・業務委託 | 民法上の請負契約・準委任契約 | 委託先事業者が自社従業員に行使 | 仕事の完成や業務遂行の結果に責任を負う |
| 労働者派遣 | 労働者派遣契約 | 派遣先企業が派遣労働者に行使 | 労働者派遣法に基づく許可・届出が必要 |
| 出向(在籍出向) | 出向協定・出向契約 | 出向先企業が出向者に行使 | 出向元との雇用関係が継続する |
最も重要な違いは指揮命令権の所在です。請負・業務委託では委託先事業者が自社スタッフに指揮命令し、発注側が直接指示を出すと偽装請負のリスクが生じます。労働者派遣では派遣先企業が派遣労働者に直接指揮命令でき、労働者派遣法の許可が必要です。どの区分かで契約形態・法的要件・現場管理の方法が大きく変わります。
偽装請負とは、請負形式をとりながら発注側が実態として直接指揮命令している状態です。行政の是正指導を受けるリスクがあるため、判断基準は厚生労働省の関連資料や専門家に確認することをお勧めします。
再委託するときの契約と注意点
受注した清掃業務を別の会社や個人事業主に依頼する「再委託」は清掃業で一般的な形態です。ただし元請けは再委託先の業務管理に責任を負うため、契約と現場管理の両面で注意が必要です。

元請けとの原契約で再委託が認められているか確認する
再委託前に、元請けとの原契約に再委託を認める条項があるかを確認します。「再委託禁止」「事前承諾が必要」とある場合は書面で承諾を得てから進めることが原則です。清掃の見積書の作り方と同様、書面確認が後のトラブル防止につながります。
再委託先と書面で契約を結ぶ
口頭の合意だけでは作業範囲・報酬・責任の所在が曖昧になりやすく、トラブル時に収拾がつきにくくなります。再委託先とは以下の項目を含む書面契約を結びます。
- 業務内容(清掃対象・作業内容・頻度)
- 納期・作業日時
- 報酬・支払条件
- 再委託先が第三者にさらに委託することの可否
- 損害賠償・事故時の対応
- 守秘義務・個人情報の取り扱い
ビルメンHUBの設計・実務担当者ヒアリングに基づく「再委託前チェックリスト」
ビルメンHUBの実務担当者ヒアリングに基づく再委託前の確認目安です。
| 確認項目 | チェックの視点 |
|---|---|
| 原契約の再委託条項 | 再委託が認められているか、事前承諾が必要かを確認済みか |
| 再委託先の事業形態 | 法人か個人事業主か、適法に事業を営んでいるかを確認済みか |
| 書面契約の締結 | 業務内容・報酬・責任範囲を書面で合意済みか |
| 指揮命令の整理 | 現場で誰がスタッフに指示を出すかを明確にしているか |
| 損害賠償・保険 | 事故・損害が発生した場合の責任分担を取り決めているか |
| 情報管理 | 物件情報・顧客情報の取り扱いルールを共有済みか |
偽装請負と言われないための現場管理
適法な業務委託を運用するうえで最も注意が必要なのは日々の現場管理です。書面上は適切な契約でも、現場の実態が「指揮命令の直接行使」と判断されると偽装請負と認定されるリスクがあります。

発注者が直接指揮命令する状態を避ける
発注側の担当者が委託先スタッフに直接「そこを拭いて」などと指示を出すことは、本来の請負関係に反します。現場での連絡は委託先の責任者を通じて行い、作業手順や人員配置は委託先が自主的に判断する形を保つことが重要です。
作業手順は委託先が自主的に決める形をとる
ビル清掃の仕様書の作り方で解説しているように、清掃仕様書は受注側が管理するものです。発注側が細かい手順を委託先スタッフに従わせる形は指揮命令に近づく可能性があります。契約段階で「成果物・仕上がり基準」を定め、委託先が自社の手順で動ける形にするのが望ましい対処です。
実態をセルフチェックする5つの視点
現場の実態が偽装請負に近い状態でないか、定期的に確認しましょう。
- 発注側の担当者が委託先スタッフに直接作業指示を出していないか
- 委託先スタッフの勤怠(出退勤・休憩)を発注側が管理していないか
- 委託先スタッフが使用する道具・用品・ユニフォームを発注側が指定・支給していないか
- 作業の段取り・人員配置を発注側が決めていないか
- 委託先が別の請負先にも同時期に仕事を受けられる状態にあるか
契約書に入れておくべき項目
業務委託・再委託の契約書は後のトラブルを防ぐ書面の土台です。記載が薄いままだと責任の所在が曖昧になります。清掃業の業務委託契約書に入れておきたい主要項目を整理します。

契約書の主要項目 早見表
| 項目 | 記載する内容の例 |
|---|---|
| 業務の目的・範囲 | 対象物件・清掃箇所・作業内容の定義 |
| 業務の遂行方法 | 委託先が自主的に方法を決める旨 |
| 報酬・支払条件 | 金額・支払時期・支払方法 |
| 契約期間 | 開始日・終了日・自動更新の有無 |
| 再委託の可否 | 再委託を認めるか、認める場合の条件 |
| 損害賠償 | 事故・損害が発生した場合の責任範囲 |
| 守秘義務 | 業務上知り得た情報の管理・漏洩禁止 |
| 個人情報の取り扱い | 取得・利用・保管・廃棄のルール |
| 解除条件 | 契約解除できるケースと手続き |
| 協議条項 | 定めのない事項の協議方法 |
「業務の遂行方法は委託先が決める」を明文化する
特に重要なのが、業務遂行方法は委託先が自主的に決定する旨を明記することです。この一文で発注者が指揮命令を行わない前提が書面に残り、偽装請負リスク管理の観点でも大きな意味を持ちます。
損害賠償と保険の整備
清掃中の事故(床の損傷・備品の破損等)に備えて、責任範囲と損害賠償の上限を契約書に定めておくことが重要です。委託先が損害賠償保険に加入しているかも確認しておくと安心です。清掃契約の継続率を上げる方法も参照してください。
契約書の作成・確認は専門家に依頼する
自社の業務内容・取引先の状況に合わせた内容かどうかは、弁護士や社会保険労務士に確認してもらうことをお勧めします。偽装請負リスクに関わる条項は専門家の目が安心につながります。
よくある質問
業務委託と労働者派遣の違いは何ですか
最大の違いは指揮命令権の所在です。業務委託(請負)では委託先の事業者が自社スタッフに指揮命令します。労働者派遣では派遣先企業が派遣労働者に直接指揮命令でき、労働者派遣法の許可が必要です。清掃の委託契約で発注者が現場スタッフに直接作業指示を出すと、偽装請負と判断されるリスクがあります。
清掃業で再委託は認められていますか
元請けとの原契約に再委託を認める規定があれば、再委託自体は禁止されていません。「再委託禁止」や「事前承諾が必要」とある場合は、元請けの書面承諾を得てから進めることが必要です。再委託を行う場合も元請けとして最終的な業務品質に責任を持つことが前提です。
偽装請負とはどのような状態ですか
請負・業務委託の契約形式をとりながら、実態として発注側が委託先の労働者に直接指揮命令している状態を指します。作業手順の細かい指示、勤怠管理、道具・ユニフォームの支給、人員配置の決定などを発注側が行うと、偽装請負と判断されるリスクが高まるとされています。判断基準は厚生労働省の関連資料や専門家に確認することをお勧めします。
再委託先に対して直接指示を出してもいいですか
業務委託(請負)の形態をとる場合、発注者が委託先スタッフに直接作業指示を出すことは、偽装請負と見なされるリスクがある行為です。現場での連絡は委託先の責任者を通じて行い、作業の具体的な手順や段取りは委託先が自主的に判断する形を保つことが基本です。判断に迷う場合は専門家への相談を検討してください。
業務委託契約書に必ず入れるべき項目を教えてください
業務の目的・範囲、業務遂行方法(委託先が自主的に決定する旨)、報酬・支払条件、契約期間、再委託の可否、損害賠償の範囲、守秘義務、個人情報の取り扱い、解除条件が主要項目です。清掃特有の事項(対象物件・作業内容・品質基準)を盛り込み、専門家にレビューしてもらうことをお勧めします。
まとめ|契約と現場管理の両輪で偽装請負リスクを防ぐ
清掃業の業務委託・再委託では、書面の契約と日々の現場管理の両面でリスクを管理することが重要です。最大のポイントは指揮命令権の所在の明確化。再委託時は原契約確認・書面契約の締結・チェックリスト活用が有効です。契約書には業務範囲・遂行方法・損害賠償・守秘義務などを盛り込み、専門家にレビューしてもらうことで安心して業務委託を活用できます。
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