
ビルメンの案件別採算管理|物件ごとの収支を見える化して儲かる契約に絞る【2026年版】
案件別採算管理とは、物件・契約ごとに売上と原価を紐付けて収支を把握し、儲かる契約と赤字契約を見分ける管理手法です。
「会社全体では利益が出ているのに、どの物件で儲かっているのかは分からない」——清掃・ビルメンテナンス会社の経営でよく聞く悩みです。契約数が増えるほど、全体の数字だけを見るどんぶり勘定では、赤字物件が黒字物件の利益を静かに食いつぶしている状態に気づけません。
本記事では、従業員5〜30名規模の清掃・ビルメン会社向けに、物件・案件単位で収支を見える化する考え方と、物件マスタを起点にした一元管理の運用、儲からない契約の見直し方を解説します。なお、人件費や資材費といった原価そのものの計算手順は清掃業の原価管理で詳しく解説しているため、本記事は「物件単位でどう収支をまとめ、どう経営判断につなげるか」に絞ります。

物件別の収支が見えないことで起きる問題
会社全体の売上と利益だけを見る経営では、物件ごとの儲けの差が数字に表れません。まず、収支が見えないことで起きる典型的な問題を早見表で整理します。
収支が見えない問題 早見表
| 問題 | 具体的な症状 | 経営への影響 |
|---|---|---|
| 赤字物件の放置 | 全体では黒字なので気づかない | 黒字物件の利益が食いつぶされる |
| 見積の根拠がない | 過去の感覚だけで値付けする | 安請け合いが繰り返される |
| 値上げ交渉ができない | 採算悪化を示す材料がない | コスト上昇を受け入れ続ける |
| 営業の優先順位が曖昧 | 増やすべき案件の像が不明 | 儲からない契約ばかり増える |
全体では黒字でも赤字物件が混ざっている
複数の物件を抱える会社では、採算の良い物件と悪い物件が必ず混在します。決算書や月次試算表は会社全体を合算した数字なので、合計が黒字であれば個々の赤字は隠れてしまいます。移動時間が長い遠方の物件、作業範囲が契約時より広がってしまった物件など、赤字の温床は現場ごとに違うため、物件単位で見ない限り特定できません。
値付けと営業判断の基準がなくなる
物件別の収支が分からないと、新規の見積も「前回と同じくらいで」という感覚値になります。どのタイプの物件が儲かるのかが数字で分かっていれば、営業をかける先も見積の水準も根拠を持って決められます。会社全体としてどの程度の利益を確保すべきかという目安は清掃業の利益率で解説しています。
案件別採算の出し方|物件単位で収入と原価を紐付ける

採算管理というと複雑な会計の話に聞こえますが、やることはシンプルです。収入と原価を「物件」というラベルで束ね直すだけです。
収支を見る単位を物件・契約に揃える
ビルメンの売上は契約ごと、コストは人や資材ごとに発生するため、放っておくと収入と原価は別々の場所に記録されます。これを 物件単位 で束ね直すことが採算管理の出発点です。1つの物件に日常清掃と定期清掃など複数の契約がある場合は、まず物件単位で大づかみに把握し、採算が悪い物件だけ契約単位に掘り下げる二段構えが実務的です。
物件に紐付ける収入と原価の項目
| 区分 | 物件に紐付ける項目 |
|---|---|
| 収入 | 月次契約料金、スポット作業の請求、追加作業の請求 |
| 原価 | 担当スタッフの人件費、資材・消耗品費、移動・駐車コスト、外注費 |
ポイントは、完璧な按分を最初から目指さないことです。人件費は「その物件に入った時間×時給換算」、資材費は主要な消耗品だけ、といった粗い精度でも、物件間の採算差を比べる目的には十分機能します。項目ごとの細かい計算手順は清掃業の原価管理を参照してください。
仮の例で見る物件別収支
あくまで仮の例ですが、月額15万円の契約物件で、人件費が10万円、資材・移動コストが2万円なら、物件の粗利は3万円です。同じ月額15万円でも、遠方で移動に時間がかかり人件費が13万円かかる物件なら粗利は実質ゼロに近づきます。売上額が同じでも採算はまったく違う——この差を一覧で見えるようにすることが、案件別採算管理の目的です。
物件マスタで収支を一元管理する

物件単位の収支把握を毎月続けるには、収入と原価の情報が「物件に紐付いた状態」で日常業務の中から自然に集まる仕組みが必要です。その土台になるのが物件マスタです。
物件マスタが採算管理の土台になる
物件マスタとは、管理している物件の基本情報・契約内容・作業仕様を一元的に登録したデータベースです。物件マスタの作り方や登録項目の詳細はビルメンの物件マスタの作り方で解説しています。採算管理の観点で重要なのは、見積・案件・作業報告・請求といった日々の記録がすべて物件マスタに紐付く構造になっていることです。紐付いてさえいれば、月末に「この物件の今月の収入と作業実績」を集計するだけで収支が見えます。
Excel独立管理ではなく業務記録と一体化する
物件別収支をExcelで別管理する方法もありますが、案件や作業報告と切り離されたExcelは毎月の転記が必要になり、忙しい月に更新が止まって形骸化しがちです。現場のスマホ作業報告やシフト・案件の記録が物件に紐付いて蓄積されるツールなら、転記そのものが不要になり、業務をこなすだけで採算把握の材料が貯まります。
ビルメンHUBの物件マスタは、案件管理・見積・写真付きのスマホ作業報告が物件単位で紐付く構造です。日々の業務記録がそのまま物件別の収支を整理する土台になります。
月次で見る数字は3つに絞る

毎月の確認項目が多いと続きません。物件ごとに見るのは 売上・原価・利益 の3つだけに絞り、月に1回、利益の少ない順に並べて眺める運用から始めます。順位の入れ替わりや利益の減少傾向に気づければ、その物件だけ原因を掘り下げる、という流れで十分です。
儲からない契約の見直し方

赤字や低採算の物件が特定できたら、次は手を打つ番です。対処は大きく3つに整理できます。
対処は値上げ交渉・仕様見直し・撤退の3つ
| 対処 | 内容 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 値上げ交渉 | コスト実態を示して契約金額を改定 | 作業量と金額が見合っていない物件 |
| 仕様見直し | 作業範囲・頻度を契約に合わせて再調整 | 契約外の作業が常態化している物件 |
| 撤退 | 契約更新のタイミングで終了を打診 | 交渉しても改善の見込みがない物件 |
いきなり撤退を選ぶ必要はありません。多くの低採算物件は、契約時から作業範囲が膨らんでいたり、コスト上昇分が料金に反映されていなかったりするだけで、交渉と仕様調整で採算ラインに戻せる余地があります。
値上げ交渉は記録が武器になる
「コストが上がったので値上げさせてください」だけでは交渉になりません。その物件で毎月どれだけの作業を実施しているかを示す作業報告の蓄積と、物件単位の収支データがあれば、値上げの根拠を具体的に提示できます。作業記録を案件単位で管理する仕組みについてはビルメン案件管理システムの選び方で詳しく解説しています。
撤退判断は感情ではなく数字で行う
長い付き合いの顧客ほど、赤字でも「お世話になっているから」と続けてしまいがちです。撤退の判断こそ、物件別の収支データを根拠に行うべきです。低採算物件に割いていたスタッフの時間を採算の良い物件や新規契約に振り向けることまで含めて、数字で比較して決めます。
物件ごとの収支を見える化する第一歩は、物件マスタに業務記録を集めることです。ビルメンHUB は物件マスタを起点に案件・見積・作業報告・シフトがつながる、モバイルファーストの業務管理クラウドです。
よくある質問
案件別採算管理とは何ですか
物件・契約ごとに売上と原価を紐付けて収支を把握し、儲かる契約と赤字契約を見分ける管理手法です。会社全体の数字だけでは見えない物件ごとの採算差を可視化し、値上げ交渉や契約見直しの判断材料にします。
収支を把握する単位は物件と契約のどちらが良いですか
基本は物件単位で集計し、1つの物件に複数の契約がある場合は契約単位に分けて見るのが実務的です。まずは物件単位で大づかみに把握し、採算が悪い物件だけ契約単位に掘り下げると負担なく運用できます。
Excelでも物件別の収支管理はできますか
できますが、案件や作業報告と切り離されたExcelは毎月の転記が必要になり、更新が止まりやすいのが弱点です。物件マスタに案件・見積・作業報告が紐付くツールなら、日々の業務記録がそのまま収支把握の材料になります。
赤字の物件が見つかったらすぐ解約すべきですか
すぐ解約ではなく、値上げ交渉と作業仕様の見直しを先に検討します。撤退は交渉しても採算が改善せず、改善の見込みもない場合の最終手段です。判断は感情ではなく物件別の収支データを根拠に行います。
小規模な会社でも案件別採算管理は必要ですか
必要です。物件数が少ないほど1つの赤字契約が経営全体に与える影響は大きく、早く気づく仕組みの価値は高くなります。月次で物件ごとの売上・原価・利益の3つの数字を確認するだけでも効果があります。
まとめ|物件別の収支見える化が「儲かる契約に絞る」経営をつくる
会社全体の数字だけを見るどんぶり勘定では、赤字物件の存在に気づけません。収入と原価を物件単位で紐付け、月次で売上・原価・利益の3つを確認するだけで、値上げ交渉・仕様見直し・撤退という具体的な打ち手につながります。継続のカギは、Excelの別管理ではなく、物件マスタに日々の業務記録が紐付く仕組みで転記をなくすことです。
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